「東京でマス釣り」の下書き

世界まぼろし協議会だより

失われた時を求めて(1)――スワン家のほうへI

あなたは、いい匂いがする、というと、「それヘアスプレーだから」と私を笑う。あなたから香る匂いは、あなた自身であって、あなたがつけている何かではないょ。しっかし、いい匂いがするなぁ。

マドレーヌからはじまる匂いの記憶の旅は細部に細部に突き進む。ヘアスプレーとマドレーヌの違い? わからない。出版社はこんなふうに紹介している。
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ひとかけらのマドレーヌを口にしたとたん襲われる戦慄。「この歓びは、どこからやって来たのだろう?」 日本の水中花のように芯ひらく想い出――サンザシの香り、鐘の音、コンブレーでの幼い日々。プルースト研究で仏アカデミー学術大賞受賞の第一人者が精確清新な訳文でいざなう、重層する世界の深み。
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論文で語ると2ページくらいで済むのに、プルースト先生は何千頁が必要だった。それ、すごくわかる。感動は何千頁のほうにある。
あなたとの過去は存在しない。記憶は300年前に遡るかもしれない。